2025年の機械学習求人動向分析:1,000件の求人データから見る実態

ゆかり

2025/05/12

ML Hiring Trends Analysis

昨年一年間で、世界はこれまでにない生成AIブームを経験しました。ChatGPT、Midjourney、Claudeのようなツールは、私たちの文章作成、コーディング、デザイン、そして思考様式までをも変革しました。これらの画期的な進歩の背後には、大規模言語モデルと機械学習の絶え間ない進化が存在します。生成AIが驚異的な速度で進化を続ける中、あらゆる業界の企業が、単にこれらのテクノロジーを導入するだけでなく、それを構築し、スケールできる人材を雇用することで、この潮流に追いつこうと競い合っています。

では、この採用の急増は具体的にどのようなものなのでしょうか?

この問いに答えるため、私たちは米国全土の企業のキャリアサイトや求人掲示板から収集した、2024年後半から2025年初頭にかけての機械学習関連の求人1,000件のデータセットを分析しました。生成AIエンジニアの台頭から、従来のML職種への継続的な需要まで、このデータセットは業界がどこに向かっているのか、そして誰が変化を推進しているのかを示すスナップショットを提供しています。

早速、数字を見ていきましょう。

このブログで使用されているデータセットはKaggleからダウンロードしたものです。分析はPowerdrillによって行われています。

どの州や都市で最も多くのMLエンジニアが採用されているか?

機械学習エンジニアが最も多くの求人機会を見つけられる場所はどこなのか気になりますか?私たちは、ML職種の採用が最も多い米国のトップ10都市と州を細かく分析しました。その結果は驚くべきものではありませんでした。

Top 10 U.S. cities and states hiring for ML roles

リストのトップはカリフォルニア州サンフランシスコで、105件の求人を誇り、次いでカリフォルニア州ロサンゼルス90件の求人で僅差で追随しています。その他の上位には、以下のテック拠点が含まれています。

  • カリフォルニア州メンローパーク – 39件の求人

  • カリフォルニア州サンノゼ – 33件

  • ワシントン州シアトル – 33件

  • サンフランシスコ(追加の求人) – 31件

  • ニューヨーク州ニューヨーク – 28件

  • カリフォルニア州マウンテンビュー – 25件

  • カリフォルニア州サンタモニカ – 19件

  • マサチューセッツ州ボストン – 17件

🔍 主なポイント

  • カリフォルニア州がML採用の状況を圧倒しており、サンフランシスコとロサンゼルスがその先頭を走っています。

  • ベイエリア(メンローパーク、サンノゼ、マウンテンビュー、および周辺都市)は、機械学習人材の主要な拠点として引き続き繁栄しています。

  • カリフォルニア州以外では、シアトル、ニューヨーク、ボストンも強い需要を示しており、AI専門知識に対する全国的な動きを浮き彫りにしています。

MLエンジニアの需要は時間の経過とともにどのように変化したか?

ML採用は活況を呈しています。データを見ると、一つのトレンドが非常に明確です。それは、本格的な採用ブームが始まったのは2025年初頭からだったということです。2022年12月から2024年のほとんどの期間、求人情報は比較的静かで、大規模な成長の兆しはほとんど見られませんでした。しかし、その静けさは長くは続きませんでした。

2025年3月には、需要が突然急増し、425件の求人が掲載され、4月には433件とそれに続き、前月と比べて劇的な飛躍となりました。

Demand change for ML engineers

このタイミングは、生成AIの導入と大規模言語モデルインフラへの企業投資の加速と密接に一致しています。企業はもはや単なる実験段階ではなく、実際にチームを雇い、構築し、統合し、スケールさせています。

誰が採用しているのか? ML人材獲得競争をリードする企業

機械学習職種の急増は、単に「どこで」だけでなく、「誰が」採用しているかにも関わっています。私たちの求人分析は、競争の激しい分野であることを示していますが、いくつかの大企業が明らかに先頭を走っています。

Companies Leading the ML Talent Race

トップはTikTokで、88件のML求人を圧倒的な数で掲載しており、リスト上の他のどの企業の2倍以上です。Meta39件の求人で2位につけており、AIインフラと研究への深い投資を裏付けています。

その他の注目すべき企業は以下の通りです。

  • Snap Inc.、Adobe、Splunk – 各18件の求人

  • Netflix、DoorDash – 各17件

  • Amazon – 15件

  • AWS (Amazon Web Services) – 13件

  • Slack、Waymo – 各11件

🔍 主なポイント

  • TikTokとMetaがML採用の状況を明らかに支配しており、AIおよび生成AIイニシアチブにおける積極的な拡大を示しています。

  • ストリーミング(Netflix)から物流(DoorDash)、エンタープライズツール(Slack)まで、多様なテック企業が積極的にML人材を求めています。

  • 小規模ながら着実に採用を行っている企業のロングテールは、機械学習のニーズが、従来の「AIファースト」企業を超えていかに広範になっているかを反映しています。

もはやMLエンジニアを追い求めているのは大手テクノロジー企業だけではありません。ほとんどすべての企業がそうであると言えるでしょう。

最も需要の高い職種は何か?

職種名からは、単なる役割以上のもの、つまり企業がどのようにAIチームを位置づけているのかが垣間見えます。このデータセットでは、ある一つの職種が他の職種を明らかに凌駕しています。

  • 機械学習関連の職種が圧倒的な数を占め、786回登場しています。これには「機械学習」または「ML」を含むすべての職種名が含まれており、この分野が中心的な焦点であることを浮き彫りにしています。

  • データサイエンティストは2番目に多い職種で、116件の求人がありますが、MLカテゴリには大きく劣ります。

  • 定義済みのカテゴリに明確に当てはまらないすべての職種を含む**「その他」カテゴリは74回**登場しています。

  • 明示的に**「AI」に言及する職種は20回**登場しており、より一般的な、あるいは概念的な枠組みを示唆しています。

  • 応用科学者(Applied Scientist)はデータセットで最も珍しく、わずか1件の登場に留まっています。これは、より狭い範囲で、あるいは特定の組織(Amazon、Microsoftなど)内で使用されている可能性が高いことを示しています。

🔍 主なポイント

  • 「機械学習」が雇用主にとって選ばれる職種名であり、一般的なAI人材よりも深い専門性を求めていることを反映しています。

  • データサイエンティストの役割は依然として高い関連性を持っており、特にデータ駆動型プロダクトの洞察に重点を置く組織において顕著です。

  • 「AI」や「応用科学者」といった職種名ははるかに一般的ではないことから、よりニッチな採用戦略や特定の技術エコシステム内での役割定義を示唆しています。

生成AIがチーム構造を再形成するにつれて、「機械学習エンジニア」という職種は単に人気があるだけでなく、新しい標準になりつつあります。

企業はどの経験レベルの職種を採用しているか?

機械学習の職種に関して、すべての職務レベルが同じように扱われるわけではありません。私たちの分析では、明確なトレンドが明らかになりました。企業は主にミッドレベルおよびエントリーレベルの人材を採用しており、上級管理職のポジションははるかに少ないのです。

数字の内訳は以下の通りです。

  • ミッドシニアレベルの職種が最も頻繁に登場し、371件の求人がありました。これは、雇用主が数年間の実務経験を持ち、すぐに貢献できるエンジニアを求めていることを示唆しています。

  • エントリーレベルのポジションがそれに続き、300件の求人があり、新規参入者や新卒者にとってこの分野に参入する大きな機会を提供しています。

  • 該当なし(Not Applicable)は209回登場しており、これは経験レベルが明記されていない、または標準的なカテゴリに当てはまらない求人であることが多いです。

  • インターンシップもかなりの数(70件)登場しており、ジュニア人材育成の健全なパイプラインを反映しています。

  • アソシエイト職32回登場しており、多くの場合、初期のキャリアや移行期の職務を示しています。

  • ディレクターレベルの職種はまれで、わずか5件の求人しかなく、エグゼクティブ職はほとんど存在しません。データセット全体でわずか1件でした。

🔍 主なポイント

  • ミッドシニアレベルが採用の狙い目であり、3~5年程度のML経験を持つプロフェッショナルに対する強い需要を示しています。

  • エントリーレベルの採用は堅調であり、多くのチームが新しい人材の育成に積極的であることを示唆しています。

  • MLにおけるトップレベルのリーダー職は希少であり、AIリーダーシップが少数の職務や上級専門家の中に集中していることを反映していると考えられます。

この分野に参入する人や、より実践的なMLの役割に移行しようとしている人にとって、市場は大きく開かれています。ただし、それに見合ったスキルを持っていることが条件です。

ML企業が本当に求めるスキルとは?

機械学習の求人要項において、あなたが知っているツールはチャンスを掴むかどうかの鍵となります。1,000件の求人分析から、本当に需要のあるスキルと、まだ普及途中のスキルが明らかになりました。

私たちが発見したことは以下の通りです。

  • Pythonが圧倒的な存在感を放ち、実に752件の求人要項に登場しており、機械学習における普遍的な言語としての地位を確固たるものにしています。

  • AWS493件の求人に登場しており、クラウドベースのインフラが今や基本的な要件であることを裏付けています。

  • 主要な2つのディープラーニングフレームワークであるPyTorchTensorFlowは、それぞれ469回388回言及されており、実際の求人要件においてほぼ同等の地位を示しています。

  • SQL294件の求人に登場しており、データクエリや前処理ワークフローにおけるその継続的な関連性を反映しています。

  • LLM(大規模言語モデル)は206件の求人に見られ、生成AIが主流の採用ニーズに入り込んでいる強い兆候を示しています。

  • MLOps142件の求人要項に登場しており、最も言及頻度は低いものの、特に多くの企業がMLパイプラインのスケーリングと本番運用に注力する中で、依然として注目すべきスキルです。

🔍 主なポイント

  • Pythonは必須です。 MLに携わるなら、流暢に使いこなせる必要があります。

  • 企業がモデルを大規模にデプロイしようとしているため、クラウドの熟練度(特にAWS)も同様に重要です。

    PyTorchとTensorFlowの両方が中核的な能力として残っており、明確な「勝者」はありません。両方を知っていることは強みになります。

  • LLMとMLOpsは台頭していますが、まだ成熟したツールの普及度には達していません。とはいえ、最先端の生成AIチームを目指すのであれば、これらは強力な差別化要因となります。

初心者であろうとベテランのMLエンジニアであろうと、これらの需要の高いテクノロジーにスキルセットを合わせることが、次の機会を掴む鍵となるでしょう。

機械学習における最も一般的な職種は何か?

職種名は、企業がどのようにAIチームを編成し、実際に何を求めているのかを示す窓となります。どのような役割が最も需要があるかを知るため、機械学習関連の求人1,000件から、最も頻繁にリストされたトップ10の職種を分析しました。

数字がすべてを物語っています。

  • Machine Learning Engineer(機械学習エンジニア)が圧倒的な差をつけて首位を走り、243回登場しており、ML採用において明確な筆頭です。

  • Data Scientist(データサイエンティスト)が53件の求人で2位につけており、依然として重要ではあるものの、トップの職種には大きく劣ります。

  • その他に頻繁に使用される職種は以下の通りです。

    • Software Engineer, Machine Learning(ソフトウェアエンジニア、機械学習) – 30件

    • Senior Machine Learning Engineer(シニア機械学習エンジニア) – 22件

    • Software Engineer, Machine Learning (Multiple Levels) – Slack(ソフトウェアエンジニア、機械学習(複数レベル) – Slack) – 9件

    • Machine Learning Engineer, AI (Fully Remote, USA)(機械学習エンジニア、AI(完全リモート、米国)) – 9件

    • Machine Learning Engineer, AI Platform (Fully Remote, USA Only)(機械学習エンジニア、AIプラットフォーム(完全リモート、米国のみ)) – 8件

    • Machine Learning Engineer II(機械学習エンジニア II) – 8件

    • Artificial Intelligence / Data Scientist Intern (HR)(人工知能 / データサイエンティストインターン(人事)) – 8件

    • Software Engineer(ソフトウェアエンジニア) – 7件

🔍 主なポイント

  • 「Machine Learning Engineer」が業界の代表的な職種名となっており、企業がこの役割をどのように定義しているかにおける専門性と成熟度を反映しています。

  • 「Data Scientist」は依然として関連性がありますが、エンジニアリングに重点を置くML職種とは異なる位置づけになりつつあります。

  • 職種名のロングテール(「ML Engineer II」や「AI Platform」のようなバリエーションを含む)は、チームがレベル、専門性、リモート勤務の柔軟性を反映するために、職種名の呼称を試行していることを示唆しています。

簡単に言えば、ML分野で仕事を探しているなら、あなたの理想の職務は「Machine Learning Engineer」から始まる可能性が高いでしょう。

まとめ:このデータが示すML採用の現状

2025年初頭の需要の急増から、Machine Learning Engineerのような職種の優勢、そしてPython、AWS、PyTorchといったスキルへの明確な選好に至るまで、このデータセットは、生成AIや大規模言語モデルの画期的な進歩とともに急速に進化する雇用市場を明らかにしています。

カリフォルニア州は依然として中心地であり、サンフランシスコ、ロサンゼルス、メンローパークのような都市が採用活動をリードしています。しかし、ML人材の必要性は明らかに広がりを見せており、TikTokやMetaのようなテック大手からスタートアップ企業、リモートファーストのチームまで、あらゆる業界の企業がAI能力を積極的に強化しています。

一方、採用トレンドはミッドレベルおよびエントリーレベルの職務に強い焦点を当てており、上級幹部職の求人は比較的少ないです。これは、企業が深い技術チームをゼロから構築しようとしているという明確な兆候です。

これからMLエンジニアを目指す人であれ、AI競争で先行しようとする企業であれ、この1,000件の求人情報のスナップショットは、機械学習の雇用市場が単に活発であるだけでなく、加速していることを再認識させるものです。そして、今日需要のあるスキル、職種、場所が、明日業界がどこへ向かうかを形作るでしょう。